風の音について~ヒューヒュー・ビュービューのメカニズム
”音が聞こえる”ということ
夜に強い風が吹いた朝には
「風の音がすごくて眠れなかった」などという声を
よく聞きますけれど
そもそもみなさんの言う風の音って
どういうことなんだろうと思い、調べてみました。
まず、音というものの基本から。
音の元となるのは、物体の振動、振るえること。
その振動によって発生する「波」が音をもたらします。
この波は、空気中のような気体の中だけでなく
液体や固体の中も伝わります。
逆に何も伝えるものがない「真空」では
音の波は伝わりません。
そして、この波が人の耳にある鼓膜をふるえさせ
その振動によって発生した信号を大脳が処理することで
人は「あ~音がしている」とわかるんですね。
もう少し詳しく音の波について説明します。
何か物が振動すると
物体の周りにある空気が押しだされて
そこだけ空気が濃くなります。
その空気の濃い部分がさらに近くの空気を押し出し
空気の濃い部分が移っていきます。
そうして、空気に濃い部分と薄い部分が順々にでき
それが波となって伝わっていきます。
ちょっと難しかったかな、これが音の波「音波」です。
ビュービュー音のメカニズム
音の基本を押さえたところで、風の音にもどりまして。
強い風で電線がうなる音や細い棒を振ると鳴る音は
エオルス音と呼ばれています。
ギリシャ神話の風の神の名前だそうですよ。
風の神 アイオロス(エオルスの語源という説がある)
(Wikipediaより)
電線や細い棒のように
柱状の物に流れの速い空気が吹き当たると
その柱状のものの後ろ側に
カルマン渦と言われる周期的な空気の渦が発生します。
(熊本地方気象台ホームページより)
その渦の変動によって
エオルス音がもたらされるそうです。
私も暴風が吹き荒れている時のエオルス音は
やはり怖いですね。
改良のキッカケは自然界に
みなさまご存知の新幹線も
風の音の対策をとっているんですよね。
1990年に最高時速300キロの
新型新幹線の開発に取り組むことになった時、
パンタグラフの風を切る音が大きいことが
問題になったそうです。
当時、試験実施部長だった方の
趣味がバードウォッチングだったそうで。
音もたてずに飛んできて獲物を捕まえる
フクロウの羽根に着目して研究。
のこぎり状のギザギザのついた
独特な風切り羽の作用で空気をうまく拡散して
静かに飛ぶことができることを突き止めたそうです。
これをヒントにパンタグラフに
同じようなギザギザをつけたら
30%も騒音を減らすことができたんですって。
フクロウの羽根の仕組みも素晴らしいですが
そのことに良く気づきましたよね。
心地よい風の音も
騒音と思う不快な風の音もありますけれど
空気の振動が遠くにある音の発生源から
私たちの鼓膜まで届いているんだなあって
そんな風に思いめぐらすと
また違って感じられるかもしれません。
参考文献:倉嶋厚他,2016:風と雲のことば辞典,講談社,pp63_64