蜃気楼について～基礎編
蜃気楼 見たことない?
蜃気楼って見たことありますか？
「聞いたことはあるし、どういうものかは知ってるけど
見たことはないなあ」という方！
あなたもきっと、目にしたことはあります。
これからの暑い時期に道路に立った時、
遠くの方に水たまりがあるように見える現象、
逃げ水っていいますが、あれは蜃気楼の一種なんです。
水たまりが見えたところにいっても水たまりはなくて、
また、はるか先のほうに水たまりが見える。
ほんとに逃げられてるようで、不思議ですよね。
幻でも怪奇現象でもありません
蜃気楼って聞くと、見えるはずがない場所がみえたり
遠く離れた外国が見えるものだって思ってらっしゃいませんか？
蜃気楼って、そんな
幻でも怪奇現象みたいなものでもないんです。
蜃気楼というのは
光が冷たい空気の層とあたたかい空気の層の境目を
通過するときに曲がることが原因で
景色がいつもと違った形に見える現象です。
(★富山県魚津市の海岸で撮影
火力発電所の鉄塔や建物が変形して見えます）
景色がびよ～んと縦に伸びて見えたり
ひっくり返って見えたりするので
それが外国の景色だと勘違いしてしまう方もいるんですね。
蜃気楼を生む光の性質
もともと光はまっすぐ進むものですが、
密度が違う二つの空気の層があると
光は密度の大きい空気の方へ曲がって進む
という性質があるんですね。
空気は温度が高いほど密度が小さく、
温度が低いほど密度が大きいので、
温度の低い、冷たい空気の方へ光は曲がっていきます。
以前、おひさまからの光が物体にぶつかって
跳ね返って私たちの目に届くからこそ、
その物体が見えるということをお話したことがありますが
その跳ね返ってくる光が
途中で曲がって私たちの目に届いたとしても、
私たちはその目に入ってきた光の延長線上まっすぐな所に
物体があると思ってしまいます。
(【上】上方に伸びる上位蜃気楼
実線は実際の光の経路
破線は観測者から虚像の見える方向
温度の境界層でゆるやかに温度が変化する場合、
光は小さく曲がり、上方に伸びる蜃気楼になります。
【中】上方に反転する上位蜃気楼
温度の境界層で急激に温度が変化する場合、
光の曲がりが大きくなり、
上方に反転する蜃気楼になります。
【下】下方に反転する下位蜃気楼
温度の境界層では急激に温度が変化するため、
光は大きく曲がり下方に反転する蜃気楼となります。
出典：「蜃気楼のすべて！」日本蜃気楼協議会著)
コップに入った飲み物にストローをさすと曲がって見えたり、
湯船の中で手の平を見ると縮んで見えたりするのは、
水と空気の層の境目で光が曲がるから。
まあ、ちょっと難しいですが、
そんな光の性質があるために景色がひっくり返ったり
伸びたりする蜃気楼が見えるんです。
大きく分けて二種類あります
蜃気楼には大きく分けると2種類あります。
遠くの景色が
上の方に変化して見えるものを上位蜃気楼。
（★北海道斜里町の海岸で撮影
上：普段の様子 下：蜃気楼発生時
ピラミッド型展望台や海岸線が
上位蜃気楼で伸びて塔のように見えます）
下の方に変化して見えるものを下位蜃気楼って言います。
（★北海道斜里町の海岸で撮影
対岸のシルエットが下位蜃気楼で
宙に浮いているように見えます）
先ほどご紹介した逃げ水は下位蜃気楼になります。
上位蜃気楼と下位蜃気楼では、
上位蜃気楼の方がレア。
なかなかお目にかかることができない現象です。
蜃が気を吐いて楼が見える？
ちなみに、蜃気楼というのも
なんだか不思議な名前ですよね。
蜃気楼の蜃の字は、
ハマグリに似た大きな二枚貝とも
龍の一種のことともいわれています。
歴史で習った中国の有名な歴史書「史記」の中に、
その蜃が気を吐いて楼閣、高い建物のことですね、
その楼閣の幻を作り出すという記述があるそうで、
それが語源となっているようです。
（Wikipediaより 蜃気楼 鳥山石燕 『今昔百鬼拾遺』）
蜃気楼については、奥が深いといいますか
もっとご紹介したいことがあるので
またお話させてくださいね。
※参考：「蜃気楼のすべて！」日本蜃気楼協議会著 草思社
★写真提供：佐藤トモ子さん
気象予報士チーム・サニーエンジェルスの仲間のひとりで
日本蜃気楼協議会にも所属されてます。
「知床蜃気楼読本」もおススメ！
WEBサイト「蜃気楼・幻氷情報 from 知床」
トモ子さん、写真提供、アドバイスありがとー！
